Research

group introduction


固体物理〜構造相転移と物性〜
相転移現象に潜む新たな自然の探求
転移とは、温度あるいは圧力により物質の状態が変化する現象を言い、 固体で見られる超伝導、強磁性相転移をその例として挙げることができる。 我々の研究室では、相転移現象の中で、 特に結晶構造の変化を伴う構造相転移に興味を持ち、 現在まで研究を行っている。 具体的には、 構造相転移の特徴を主に透過型電子顕微鏡等の回折結晶学的手法を用いて調べ、 得られた実験結果から構造相転移の機構および 相転移と物性との相関を明らかにするとともに、 基礎学問に基づきその特徴を検討し、 相転移現象の中に潜む自然の新たな一面を探求している。 現在行っている具体的な研究テーマおよびその内容は以下の通りである。

(1)酸化物超伝導体での低温構造相転移と超伝導

系酸化物超伝導体には、 その構造中に含まれる酸素八面体の傾斜によって特徴づけられる 逐次構造相転移が存在する。 この逐次構造相転移の中で、100K付近で生じる相転移は、特に低温構造相転移と呼ばれ、 超伝導遷移温度の抑制に直接関与することが指摘されている。 ここで、この相転移の特徴は、 自由エネルギー中に秩序パラメータである酸素八面体の傾斜と自発歪の結合項が 存在することである。 我々の研究室では、この結合項の役割を正しく理解するため、相転移のその場観察を行った。 その結果、相転移において局所的に群論が破綻していること、さらに相転移の進行が、 通常の核生成・成長型ではなく、特異なものであることを明らかにしている。 現在は、この局所的な群論の破れに関係した、 新しいタイプの動的局所構造揺らぎの直接観察を行っている。

(2)3d遷移金属酸化物での一次相転移と物性

子の多体効果によって特徴づけられる強相関電子物質の中で、 単純ペロブスカイト型構造を有する3d遷移金属酸化物には、 酸素八面体の傾斜と晶系の変化を伴う一次構造相転移が共通して存在する。 我々は、この相転移での八面体の傾斜と晶系変化との相互作用および 物性との相関を理解するため、 Ti, VおよびMn酸化物での構造相転移の特徴を透過型電子顕微鏡を用いて調べている。 現在までに、これら酸化物での相転移の進行過程を明らかにするとともに、 高温相と低温相の特異な共存状態を示唆する実験結果を得ている。 今後は、より詳細な実験データを収集することにより、 本構造相転移での相互作用の詳細について明らかにすることを予定している。

(3)ペロブスカイト型酸化物における変調構造と物性

純および層状ペロブスカイト型酸化物には、 不整合周期を有する変調構造が存在する。 ここで、不整合周期の出現は、 たとえば強誘電的相互作用と反強誘電的相互作用の競合によるものであると指摘されている。 本研究室では、この指摘の妥当性を実験的に明らかにするため、 いくつかの具体例に関して、 強誘電相および反強誘電相と不整合相との結晶学的な類似性あるいは相違点について調べている。 その結果、たとえば、 反強誘電相と強誘電相が存在する単純ペロブスカイト型酸化物Pb-Zr-Ti-Oにおいて、 その相境界に不整合構造およびディスコメンシュレーションの存在を見出している。 今後は、不整合構造出現のための競合する相互作用の詳細をより深く理解するため、 より系統的な実験を計画中である。

(4)合金におけるフラストレーション型構造変化

ジングスピン系との類似性から、合金に見られる規則構造間の構造変化は、 原子対相互作用に関するフラストレーションの導入として理解され、 このためフラストレーション型構造変化と呼ぶことができる。 すなわち、不整合構造の場合と同様に、 この構造変化も競合する相互作用という視点からその過程をとらえることができる。 現在までに行った研究テーマの一例は、Ti-Al合金でのD019→L10構造変化であり、 興味深い事実として、 フラストレーションを回避するための非晶質化という現象を見出している。 今後も、種々のタイプのフラストレーション型構造変化について、 その特徴を明らかにすることを予定している。

(5)合金におけるクラスターの形成過程


小山研究室では、主に上記のテーマに関して研究活動を行っています。


[ back to site home ]

Koyama Lab., Department of Material Science and Engineering, Waseda Univ.